横溝正史ミステリー「犬神家の一族」
映像作品だと、どうしても、1976年の市川崑監督に行きついてしまう。
金田一耕助役の石坂浩二の声の音域が傑作にさせているとブログで書いてる方もみえたが、それだけではないはずだ。
女優の美しさとフィルムの温度感(終始モヤっと感あり、ヌルっとした温かさを感じる)、後は原作の発行日1972年なので、やはりあの昭和時代でないと出せない風景などがあり、今はそれをやろうとするともう限界なのではないかと感じる。
女優の美しさを存分に引き出すため、照明もそうだしフィルム(メーカーを知りたいくらいだ。知ってどうするという話だが…)、フィルム現像の技術、演出、脚本、演者のキャスティングなど、全てがベストマッチなのであろうと思う。
女優のメイクと衣装も、こだわりを感じる。
(情報を得るのが間に合わず、吉岡版の金田一耕助は「犬神家の一族」しか観れていない。)
確かに、テンポのよい音楽などと原作重視のシナリオはよいとは思う。
思わず、原作をもう一度読んで再度確認したくなるくらい面白かった。
(原作を購入してしまった。)
ただ、やはり昭和の良さがどこか欠けている。
風景の描写も少ない。
いや、ほとんどないのである。
なんとか、尾道(?)などではないかと感じる風景など、古そうな場所をつないでいるが違和感しかない。
そこが、もう時代の限界なのだろうと思う。
女優も実力のある美女がそろってはいるが、あのフィルムの温度と思わず見とれてしまう美しいという感動が起こらない。
化粧品も当時の物でないし、化粧を工夫しても昭和を出せないのだろう。
その辺は、映画とドラマの予算の違いもあるのかもしれないが。
少々、金田一耕助の衣装が綺麗過ぎるのも違和感だ。
金田一耕助は調べることに集中し、身なりには気を使わないのである。
原作にこだわりるのなら、その辺もこだわらないといけないはずだ。
どんなにリメイクを試みても、昭和の良き古き風景はもうほとんどないから、やはり横溝正史ミステリーをこの時代に実写映像化するには限界を感じるのである。